【エベレスト登山】標高8000m以上デスゾーンで蓄積されていくゴミ

エベレスト登山に挑戦する人は年々増加し、2019年には1シーズンの登頂者が876人となり、過去最多登頂を記録を更新しました。

2020年はコロナ禍のためにネパール、中国ともエベレスト登山の中止を発表しましたが、2021年からはまた登山者の増加が見込まれています。

エベレストのゴミはなぜ増えるのかが今回のテーマです。

エベレストの高所になぜゴミはたまるのか
【写真】エベレストの高所になぜゴミはたまるのか

増加する登山者による問題

2000年代に入ってから、エベレスト登山者は増加し続けている。これによりいくつかの問題が発生しています。

一つは

・標高8000m以上での渋滞

そしてもう一つが、

・高所におけるゴミ

です。

すれ違えない一本道では渋滞になる
【写真】すれ違えない一本道では渋滞になる

標高8000m以上での渋滞は2019年の登山でより深刻化し、事実この渋滞により数名が死亡したとされています。

それに比べるとゴミ問題は直に人命に影響するわけではないが、年々蓄積され大きな問題になりつつあります。

どんなゴミがあるか

どんなゴミがあるのでしょうか。

エベレスト高所のゴミはおおよそ二種類に分けられます。

・登山に用いた食料や、道具

・人間の排泄物

特に問題になるのが登山で用いられたものです。

エベレスト登山には高度順応が終わってからも数日をかけて山頂を目指すのであるが、その過程で食事をとらなければならず、そういったもの関連のゴミが多いです。

食事は体力をつけるため、体を温めるために携帯ガスボンベを使うが、そういったガスボンベなどが目立ちます。

ガスボンベのゴミが目立つ
【写真】実際に撮影、キャンプ4のゴミ、ガスボンベのゴミが目立つ

そして登山の道具としては酸素ボンベが大きいゴミとなっています。

また人の排泄物も問題になっています。

ベースキャンプでは簡易式のトイレが設置され、そこに溜まった排泄物をベースキャンプから下に運ぶ人がいます。

ベースキャンプに設置されるトイレ
【写真】ベースキャンプに設置されるトイレ、ここの周りを覆うテントが立つ

しかしベースキャンプより高い場所ではこういったトイレは設置されません

従って、登山者の排泄物は設置キャンプ付近に放置されることになります。

岩陰になり用を足すのにちょうどよい場所はトイレゾーンと化しています。

多くの場合、シーズンが終われば、降雪や風化で目立たなくなります。

どうしてゴミを放置してしまうのか

エベレストの高所にどうしてゴミは放置されてしまうのでしょうか。主な理由は2つあると考えます。

・ゴミに対する意識

個人的な見解になりますが、エベレストがあるネパール、中国ともにゴミに対する意識は日本とは違います

多くの日本人の感覚ではゴミのポイ捨てはよくない、ゴミ箱に捨てようという感覚というか道徳感があります。

一方、インド、ネパールまた中国ではゴミは路上に放置し、それを清掃する仕事があり、その人達の仕事を取らないようにという考え方があります。実際に旅行してみると分かりますが、ゴミに対しての意識は日本ほどは感じませんでした。

中国旅行中に通過したゴミゾーン
【写真】中国旅行中に通過したゴミゾーン

今日のエベレスト登山はネパールのシェルパによって支えられ、成り立っているといっても過言ではありません。

テントの設営から食事の準備をするシェルパの彼らのゴミに対する認識が影響しているとも言えます。

・回収困難な環境

標高8000mを超える領域はデスゾーンと呼ばれ、滞在しているだけで人は弱っていくという領域です。

このデスゾーンの過酷さは、遺体を回収するのが難しく、遺体が放置されているということでよくわかります。

【図】エベレストのデスゾーン
【図】エベレストのデスゾーン

このような過酷な環境下において、自分の生命を維持するだけで精一杯、ゴミを回収して持ち帰るという、自分に負荷をかける行為は後回しになります。

空になった酸素ボンベも結構な重さがあります。そういった重さを体に負担しなければそれだけ軽快に動けます。

自然環境の厳しさがゴミを放置してしまう理由の一つではないでしょうか。

どうしてゴミが問題になるのか

エベレストの高所で排出されたゴミは持ち帰る以外に回収する方法がありません。

近年こそ、エベレストのクリーン化が叫ばれていますが、それ以前はゴミは放置されたままの状態が続いていました

この世界一位高い山に放置されたゴミを回収する方法はありません、年々ゴミが増え、更に、登山者が増えることでゴミが更に増えていきます。

高所のゴミは何が問題になるのか
【写真】高所のゴミは何が問題になるのか、写真はインド

通常の陸地や海がゴミで汚染されると、それらを食べてしまった動物や魚などが死に、生態系に大きなダメージを与えるとされていますが、この生態系のない氷と岩の世界では何が問題なのでしょうか。

標高6300mのキャンプ2
【写真】岩と氷と雪しか存在しない標高6300mのキャンプ2

一番の問題点は、景観へのダメージだと思います。

酸素を吸入し、命の危険を冒し、辿り着いた標高8000mのサウスコルがゴミの山であったら、それは何か残念な気持になります。

ネパール側の最終キャンプであるサウスコルがゴミにまみれたところで、ここには生態系もなければ、住んでいる人もいません。

年に数回登山者がやってくるだけです。

しかしここがゴミの山では何か人間の業を感じずにはいられないでしょう。

登山者が少ない時代は、ゴミも少なく、何となく登山者も気にせずに済ませていられたのでしょうが、近年の爆発的登山者増加によりゴミの量が一気に増えてもはや無視できないほどになったということです。

そこでネパール政府は登山チームにゴミの回収を義務づけ、シェルパに対してはゴミを回収してきたら、その重さについて料金を支払うという方針を打ち出しました。

世界一高い場所がゴミ溜めというのはイメージが相当に悪くなります

今後の展開に期待

2019年6月ネパール政府はエベレストのゴミ清掃チームを組織し、最終的には11トンのゴミを回収したと報告しています。

また2014年以降はゴミの収集が義務づけられています。

今後、増えた登山者それぞれが、出したゴミ以上を持ち帰るようになればエベレストの清掃も進むのではないでしょうか。

今回は以上です。

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