皆がライトのスイッチを切ると今まで経験したことの無いような漆黒の闇に囲まれた。
1m先どころか、1cm先も全く見えない、明かりが一切無い完全な黒の世界だ。
目を開けても、閉じても目の前の暗闇は全く変化しない。
「まぶたを上げる」という動作をしているのだが、目の前には何も映らない闇があるだけだ。
スパス君の
「これが本当の闇だよ」
という声が響く。
こんなところでライトの調子が悪くなったらと考えると恐ろしい。
手探り道を探しても枝の様に分かれている道を正確に戻れるはずが無い、そのうち力尽きて、闇の中でひっそりと死んで行くしかない。
頭に付けているヘッドランプが急に何にも換えがたい貴重なものに思えてきた。
ことの始まりはこうだ。
「洞窟探検に行こう」
とスバス君が言い出した。
「洞窟?」
と私は聞き返す。
「そう、以前行ったことがあるんだ、なかなかの冒険なんだ、冒険は好きだろう?」
と言われて、面白そうだと思いここまでやってきたのだ。
「洞窟」と言うと岩壁や地中に向かって大きな暗い不気味な穴が広がっているところを想像するが、私達がやって来たところは、何処にでもあるような土手だった。
「こんなところに洞窟があるの?」
するとスパス君が「ここ」と言って人がはってやったと入れる様な隙間に寝そべった格好で入っていく。
「こんな狭いの?」
出来れば服を汚したくないがそんなことも言っていられないようだ。
体を地面にへばりつけて、もぞもぞとイモムシの様にはって前に進む。
3m位進むと急に上体が起こせる空間になった、既に入り口の明かりは殆ど届いていない。
ヘッドランプの明かりを点けると湿度で塗れて光る丸みを帯びた土色の不恰好な空間だ。
不気味過ぎてもう既に引き返したい気持ちだ。
スパス君が先に進み下に向かう穴に入っていく、私もその後を続く。
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