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06海抜0mからエベレスト編

  • 2005年6月20日

手のひら

カトマンドゥに到着してあっという間に数日が過ぎた。 雪崩や滑落の恐怖に怯えることも、天気予報を聞いて一喜一憂することもない、あの薄い空気の中での記憶が薄れ、腑抜けた平穏な日々が流れていく。 カトマンドゥの街中を自転車を漕いでいて、ふと立ち止まった。何かが視線に入ったからではなく、自分の手のひらを見るためだ。 ハンドルを握る手の平をシミジミと眺めた。片手の5本の指がついていて、両方で10本だ。 頭の […]

  • 2005年6月10日

初夏の風

 エベレストのベースキャンプを出発してから一週間が経つが、相変わらず山の中を歩いている。 自転車を止めた場所を目指している。薄い空気の中で登山して痩せてしまった体は標高が下がると軽くてしょうがなく、酸素の濃さも手伝って峠さえも辛くなかった。トレッキング道に入ると緑や花が綺麗で散歩気分で歩く。 昨日の夜は泊まった山小屋で窓を開けたまま寝てしまったが、外から入ってくる風は冷たくなく心地よかった。すれ違 […]

  • 2005年6月1日

疲労感

山頂は完全に雪で覆われている。 広さにして3畳くらい、そして「タルチョ」と呼ばれるチベット仏教の旗が雪面に刺さり、強風になびいている。 赤、青、黄、緑などの原色で、色はあせていないから今期の登頂者が残していったものだろう。ここに留まってこの素晴らしい景観を眺めていたいとも思うがそうもいかない、立ち止まっているだけでもボンベの酸素を消費しているのだ。仮に酸素が尽きてしまったら、思うように動けなくなり […]

  • 2005年5月31日

終着点

もう稜線の先には何も見えない、何も存在しているものはない。 あるのはからっぽの青い空だけだ。 稜線の終わりに色とりどりの旗が見え、それが風になびいている。 雪と氷と岩の圧倒的な自然の中に、不釣合いな旗。 人類がそこまで達したという証。 荒げる呼吸の中、旗に向かって足を一歩一歩出していく。 そこがどういう所かよく知っていた。 今まで追い求めてきた場所。 ずっと夢見ていた場所。 足を前に出しながら、今 […]

  • 2005年5月30日

サウスコル

 岩場を進んで行くとテントが見え始めた、サウスコルにある標高8000mのキャンプ4だ。  サウスコルに着いたが我がチームのテントは無く、これから作るのだという。 強い風が吹き荒れていて、台風みたいだ。酸素マスクを外してみる、ゆっくり動けば酸素が無くても大丈夫そうだ、しかしここは標高8000mにもかかわらずゴミが多い。  シェルパが設置してくれたテントにもぐり込む、パサンが雪を溶かしてスープを作って […]

  • 2005年5月27日

ジョセフの決断

5月27日からの好天に合わせ、キャンプ2まで登ことになった。 今年は良い天候に恵まれず登山期が大幅に遅れていた。 春が終わりを告げると、外気温が一気に上昇し、雪崩が頻発するようになる、通常はその前に登山を終了させるのだが、今年は未だに誰も登れていない。 最後の好天には多くの登山隊が期待をかけ、同時期に上り始めた。そのせいか、アイスフォールの難所では見たことのない渋滞が出来ていた。 雪崩の頻度や、ク […]

  • 2005年5月25日

スティーブ下山

エベレストの春の登山期は4月5月であり6月はない。 なぜなら6月に入ると気温が上昇し、アイスフォール氷塊の崩壊が活発になるからだ。  5月でさえ氷壁の倒壊が起こり、その度にルートが変更になった。6月は更に崩れやすくなるというのだ、そうなるともう登山どころではないだろう。長年エベレスト登山を経験しているシェルパでさえ6月はアイスフォールに入りたく無いと言うのだ。 5月23日の登頂計画が断念されて、私 […]

  • 2005年5月21日

一度きりのチャンス

交錯する天気予報を絞り、アタックする日が決まった。 19日から23日まで良い天気が続きそうだとの天気予報が多かったので、私達の隊もその情報に乗り出発することになった。 いよいよ明日出発という時になり、天気予報が一転した、晴れの期間が一日早まったのだ。 つまり、明日出発を今日にしなければ登頂は難しいという予報になった。それを聞いて同じ隊の4人はすぐにベースキャンプを出発、キャンプ2を目指した。私達は […]

  • 2005年5月14日

退屈な日々

好天を待つ日々は退屈だ。 ベースキャンプには電気はきていない。発電機を持ち込む隊もあるが、発電機を動かすにもも燃料が必要で、結局のところ節約が大事になってくる。どの道常時電気が使えるわけではない。 私のいた隊は発電機がなく、電気が必要になると、ベースキャンプから歩いて2時間のゴラクシェプまで下って、充電をすることになる。何度か充電の為に往復4時間掛けてゴラクシェプまで行ったが、あまりに大変なので、 […]

  • 2005年5月12日

天候待ち

 高度順応の行程を何とかこなし、一旦、高度の低いペンボチェまで降りて数日を過ごした。  さらに3000m台のタンボチェまで降りると、あたりは青々と木々が茂り、路上には色とりどりの花が咲いていた。ペースキャンプの様な岩と雪のモノトーンの世界から降りてくると、木の緑や花の色が新鮮なものに写り、大げさだけど、おとぎの国に来てしまったかの様だ。 再びあの地の果ての様な世界に戻ると思うと少々気が重い。しかし […]