もう稜線の先には何も見えない、何も存在しているものはない。 あるのはからっぽの青い空だけだ。
稜線の終わりに色とりどりの旗が見え、それが風になびいている。
雪と氷と岩の圧倒的な自然の中に、不釣合いな旗。
人類がそこまで達したという証。
荒げる呼吸の中、旗に向かって足を一歩一歩出していく。
そこがどういう所かよく知っていた。
今まで追い求めてきた場所。
ずっと夢見ていた場所。
足を前に出しながら、今までのことを思い出していた。
今まで走ってきた道のり。
今まで通ってきた国。
今まで出会った人々。
そして今までの自分の気持ち。
胸が熱くなり、涙が込み上げてきた。
だけどそれは飲み込んだ。
すぐそこに終着点が見えている。