石の手紙

橋を渡るとニャラムの町だ。

町に入ると英語の表記もあり、なんとなく観光地っぽい、そして何よりチベットとは違う雰囲気が少しある。

店に並んでいる商品も今までに見たことないクッキーやビスケット。手に取ってみるとチベット語、中国語でもない文字が記載されている。ネパールの商品なのだ。いよいよ国境が近づいた証拠。

旅行会社の人が英語を話せたので道を尋ねる。チベット最期の街「ジャンム」まで30kmだと言う。長かったチベットも残すところ30kmとは、嬉しいが少し寂しくもある。

私とマロさんは定番の「チャーハン」5元を食べ、それからインスタントラーメンも食べた、腹一杯である。町を出たのは3時過ぎになってしまったが、下り坂なので今日中に30km先のジャンムにつけるだろう。

ニャラムの町を抜けるとまた急な下り坂が始まる。蛇行した道が続き、やがて道は川沿いに落ち着いた。川のそばを走っていると徐々に緑色が増えてくる、砂漠の様なはげ山から下ってきた私達の目にとても新鮮に映り、眩しい。死の世界から命溢れる、生命の世界に来たような感覚だ。雨がぱらついていたので緑がより一層に輝いて見えた。

嬉しい石の手紙

町から出た標石の下に不自然に大きな石が置いてある。

「あれ?」注視するとそこに黒いマジックで何か文字が書いてある「なんだろう???」

マロさんと二人でのぞき込む。私達にも読める文字「日本語だ」。石にはこう書いてある

「6月3日9時45分ジャンムまで32kmです。近江」

マロさんと顔を見合わせる「これ、近江さんだよ・」石の置き手紙だった。こんなものを今までに見たことも聞いたこともない手紙に驚いた。

しかし嬉しいものである。今日は5日なので2日前に近江さんがこれを書いたことになる。確か近江さんはティンリーの町からジャンムの町まで車に乗せてもらっているので、こんなところで石に書き込めるわけはない。

私とマロさんにとっては「???」であった。車が休憩で止まった時に書いたんだろう、この時はそういう結論になり私達は進むことにする。

するとそこから標石の「下一桁が0と5」の碑の下には近江さんの石の手紙が置いてあった。「近江さん、ここ、自転車で通ったんだ」いくつも見つけた石の手紙を見てそれが分かった。

ジャンムに行く車だったのだが、ニャラムで下ろしてもらい、自転車でジャンムに向かっていたのだ。「5km」おきに置かれている手紙がちょうど私達が「5km」おきに近江さんが追いつくのを待っていたことを思い出させてくれる。

写真の手紙には

「天空の道318号線も終わりが近くなりましたね、それぞれ自分の中に何かが・・・近江」

と書かれている。嬉しい手紙は道沿いにずっと続いていた。

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