【エベレスト登山】常識では考えられない、遺体が放置される場所。

地球上に亡くなった人を放置しておく場所があるだろうか。

エベレストの山頂付近以外にそんなところはないだろう。

【写真】エベレストの山頂付近には遺体が沢山残されている。
【写真】エベレストの山頂付近には遺体が沢山残されている。

2014年の今なおエベレストの山頂には100以上の遺体が放置されている。

なぜ遺体を埋葬できないのか?

今回の記事はそれを考えてみた。

厳しい自然環境

・ヘリコプターは使えない

エベレスト山頂付近、標高8000mを超えた地帯は空気は地上のおよそ三分の一、常に吹き荒れる強風と、厳しい寒さの中にある。

人間の高度順応の限界を超えた標高であるために「デスゾーン(死の地帯)」とも呼ばれている。

自然環境が厳しくてもヘリコプターで遺体を輸送すればよいじゃないか?と思うかもしれない。

しかし薄い空気の中ではヘリコプターは浮力を失うのである。

聞いた話では標高6300mのキャンプ2にヘリコプターを飛ばすのは至難の業であるとのこと。

2013年、エベレストに挑戦した三浦雄一郎氏が下山のためにヘリコプターがキャンプ2まで登ったが、これは稀なケースといえる。

通常エベレスト登山の緊急運搬はベースキャンプ標高5300mから行われるが、それも簡単ではないようだ。ベースキャンプ付近に落ちたヘリコプターの残骸が二機あるのを見れば明らか。

【写真】ベースキャンプ付近で墜落したヘリコプター
【写真】ベースキャンプ付近で墜落したヘリコプター。

よってキャンプ2よりはるか上のキャンプ4までヘリコプターを飛ばすのは不可能に近い。

(ちなみに2005年5月14日ヘリコプターがエベレスト山頂に着陸した記録があるが、これは世界で初めての記録→外部ウィキペディア

従ってヘリコプターでの遺体回収は考えられない。

・腐敗しない遺体

エベレスト山頂付近に遺体が放置されている理由の一つに腐敗しないことがあげられる。

地上であれば、バクテリアや昆虫により死体の腐敗、分解が進行するが、標高8000mを超え、年間を通じて冷気温の世界では腐敗が進みにくい。

すなわち遺体が分解されずに永久に残る。

・一年中冷温

標高8000m以上の気温は年間を通じて、マイナス15℃以下なので、ほぼ冷凍庫と同じ気温であるといってよい。(参考外部エベレスト山頂の気温

これも遺体が腐敗しないで残っている大きな理由の一つでもある。

【写真】標高8000m以上のデスゾーンはマイナスの世界

何故担いで下ろせないのか?

ヘリコプターが使えないのならば、人力で担いで遺体を降ろせばよいじゃないかと思われるかもしれない。

それができないのがデスゾーン。

標高8000m以上、地上の三分の一しか空気がないデスゾーン領域では人間は高度順化が進まない。消化器官は機能せず、呼吸は速くなり、滞在しているだけで疲労していく。

この状態で遺体を運ぶことが何を意味するか。

人間は女性であっても50kg以上はする、大柄な人になれば80kgはするだろう。加えてエベレスト登山者は重い装備-プラスチックブーツ、分厚い衣類、登山用具など-身に着けている。

遺体を全裸にすれば少しは軽くなるだろうが、それでも50kg以上、これを自分の負担に加えるということは、自らも死の危険に晒すことになる。

複数人でソリに乗せて回収という考えもあるが、スキー場の様ななだらかな斜面が続くわけではないのでそれも現実的ない。

デスゾーン内では自らの命を維持するだけで精一杯。

よって必要以上に負担をかけると何が起こるか分からない世界なのである。

エベレストの登山では動けなくなった人の前を、手助けできずに登山者が通過していくだけという、地上では考えられない非情なことが起きる。

酸素を与えたり、肩を貸したり、その場に留まっているだけで生命が消耗し共倒れになる。

私達が暮らす社会ではおおよそ考えられない倫理観、道徳観がそこには存在する。




まとめ

科学進歩が目覚しい今日であるが、エベレストの山頂付近には多くの遺体が残されている。

標高8000mを超えた「デスゾーン」には登山の救助に活躍するヘリコプターは近づけない。

人間がやっと生きていられるエリアでは、他人を救助したり、遺体を運ぶという行為が自らの命を削る。

今後画期的な回収手段ができない限りエベレストに残された遺体は、、雪と氷の世界に留まり続けるだろう。

<関連リンク>
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