2019年5月エベレスト登山の標高8750m付近の登山者による渋滞が話題になった。
これまでもネパール側のエベレスト山頂付近の渋滞は度々話題になったが、決定的な打開策がないのが現状。
2019年のエベレスト登山の報告によると、春季のエベレスト登山だけで死者が11人報告されている。
年々増えるエベレスト登山希望者、ルートは確立され、装備は改良され、天気予報も正確になるのにかかわらず、エベレスト登山で命を落とす人が少なくない。
その一つの要因がエベレストの渋滞であると言われている。

一本しかない山頂へ続く道
登山をした経験があるならわかるが、山というのは裾野が広く、登るに従い、道が険しくなっていくもの。
エベレストも例外ではない。
特にエベレストの場合、最終キャンプである標高8000mのキャンプ4から山頂8848mまでの区間は、フィックスロープという安全を確保するためのロープが据え付けらており、登山者はそれに安全帯をつなげ、沿って登っていく。
通常ロープは一本張られるだけだ。
少し幅のある山道であれば前の人が遅い場合追い越せるが、細い岩場の場所では追い越しはできない。
つまり先行者に登攀速度の遅い人がいれば、追い越しのできる場所まで皆そのスピードに合わせることになる。
細い山道一本道を先を走っている遅い車を追い越せないのに似ている。
更に、エベレスト登山の場合は、この一本道に下りの人も加わるのだ。
下りの人も同じロープを使い下ってくる。
人が簡単にすれ違える場所であれば何ら問題はない。

しかし氷の急斜面や岩壁ではそれはできない。
従って、道があくまで待つ以外に方法がないのだ。
命を削るデスゾーン
夏のビーチで海の家を席が空くのを待つのなら何時間待っても問題ないだろう。
しかし待つのが標高8000m以上、気温マイナス20、酸素が地上の三分の一では命の危険がある。
標高8000m以上はデスゾーンと呼ばれ人間がどんなに高度順応しても、滞在しているだけで死に近づいていくといわれるエリアだ。
デスゾーンでは人は酸素ボンベから酸素を補助し、しかも行動を停止していると寒さに体力を奪われていく。
待ち時間が長くなればなるほど、デスゾーンでの滞在時間が長くなるわけだ。
2019年の死者の中には登頂数分後に亡くなったイギリス人男性がいる。こういうことがいつ起こっても不思議ではないエリアとも言える。
2006年では歩けなくなった登山家デイヴィッド・シャープ氏を、助けられずに、多くの人が目の前を通過しただけという痛ましい事故もあった。
これらの事故からも分かるように、通常では考えられないほど過酷な条件下にある。

このデスゾーン内で最も危険とされるがヒラリーステップと呼ばれる岩場である。
渋滞が起こるヒラリーステップ
ヒラリーステップは上記の渋滞が起こる危険な地帯としてすべての要因がある。
ヒラリーステップはエベレスト初登頂者であるエドモンド・ヒラリーが最初に攻略したのでこの名がつけられている頂上直下の難所。
・厳しい岩場
先行者を追い越したり、下山者とすれ違うのが困難な岩場である。

先に述べた通り、ここを通過できるのは同時に数人、後は順番を待たねばならない。
・デスゾーン
ヒラリーステップはおよそ標高8760mにある。8000m以上はデスゾーンと言われるがまさにデスゾーンの中に位置する。
・頂上直下
エベレストの標高は8848m、ヒラリーステップはそこからわずか100mほど下ったところにある。
すなわち、山頂を目指す人と、山頂から下る人が多くすれ違う場所になっている。
この上下の登山者が集ってしまうのもの渋滞が起こる大きな要因と言える。
対応を迫られるネパール政府
エベレスト登山者は年々増加傾向にある、まして2020年はコロナ禍のために登山が中止され、この登山者が翌年に持ち越すとすると2021年はエベレスト登山者希望者が更に増加するかもしれない。

以前からエベレストの渋滞は指摘されてきた。
ネパール政府はヒラリーステップに梯子の設置を検討するなどと施策を発表してきたが、2020年まで手付かずの状態。
今後の登山者の増加に備えてネパール政府には対策や規制に期待したい。
今回は以上。
<関連リンク>
【エベレスト登山】頂上直下の難所ヒラリーステップ崩壊か?
【エベレスト登山】ネパール政府がエベレスト難所ヒラリーステップにはしご設置を検討。
【エベレスト登山】簡単説明。山登りしない人でも分かるエベレスト登山。

ツイッターで更新、最新情報をつぶやいています。
@bikeandmagicさんをフォロー