2020年エベレスト登山費用を詳細にみる、公募隊に含まれる費用

年々エベレストの登山者希望者は増え、それに伴いエベレストの登山料金も値上がりしつつある。
今回はエベレストにかかる費用を詳細に見ていく。

登山費用は主にネパール側の公募隊と言われるエベレストの登山ツアーに参加した場合を想定。

近年増加するエベレスト登山者
【写真】毎年増加するエベレスト登山者

著者がエベレストに登頂したのは2005年であり、ずいぶんと時間が経過しているので2020年度の費用はhttps://www.alanarnette.com/index.php(英語)を参考。

なお費用金額はドルから日本円に換算しているが、レートは1ドル=110円で換算。

2020年エベレスト春季登山は中止

2020年度のエベレスト登山費用と題しているが、2020年度春のエベレスト登山は中国、ネパール側とも新型コロナウィルス感染拡大のため中止となった。

登山なので新型コロナウィルスは関係ないと思われるかもしれないが、公募隊登山は高所では一つのテントに3~4人が共有することになる。

高所登山は3密になりやすい
【写真】高所登山は3密になりやすい

いわゆる「3密」の状態は避けられず、感染者がいると感染拡大が懸念される、中止は賢明な判断だといえる。

エベレスト登山費用概要

エベレスト登山の公募隊に応募した場合、費用は大きく分けて2つになる。

1.公募隊参加費→公募隊に参加する費用

2.それ以外→自分で準備する公募隊参加費以外の費用

公募隊とはエベレスト登山のツアーと考えると「ツアーに含まれる料金」と「含まれない料金」ということである。

下記の概算はネパール側を想定

概要的には


1.公募隊参加費に含まれる料金

・エベレスト入山料

・ベースキャンプ滞在費

・高所キャンプ滞在費

・シェルパ(ガイド)料金

・ルート使用料

・ベースキャンプゴミの回収費

・政府オフィサーの費用

・酸素とマスク

などである。


2.公募隊費用に含まれないもの

・ネパールまでの渡航費

・カトマンドゥ滞在費

・ベースキャンプまでのトレッキング費用

・個人の装備

・保険

・登頂の際のガイドに対するボーナス

・通信費

などである。

各項目を見ていく。

エベレスト入山料

エベレスト登山を高額なものにしている要因の一つに入山料がある。

入山料とは、簡単に言うと入場料のようなもので、エベレスト登山をするためにエベレスト登山域に入る許可である。

これはエベレスト登山の成否にかかわらず、エベレスト登山をするものであれば支払わねばならない。

エベレストは中国、ネパールの国境にあるので、中国側から登る場合は中国政府に、ネパール側から登る場合はネパール政府への入山料の支払いが必要となる。

入山料を支払うと、登山の許可が下りる。これがエベレスト登山許可証になる。

2020年の時点で

・エベレスト入山料(許可証)

エベレスト登山する国入山料
中国4人以上のチーム許可制 1人当たり15800〜18000ドル 173万~198万円
ネパール1人 11000ドル 121万円

となっている。

これはエベレスト登山するのであれば必ず支払わないといけないものである。

2017年無許可でネパール側からエベレスト登山をした南アフリカの登山家が逮捕されている。
【エベレスト登山】2017年登山許可を取らずにエベレスト登山をして逮捕される。
またエベレスト南西壁を舞台にした小説「神々の嶺々」の中の登場人物も無許可登山をしているが、厳しいペナルティを受けている。

入山料は通常公募隊の料金に含まれている。

登山中の滞在費

エベレスト登山は高額であるとともに、その期間が長いことでも知られている。

超高所登山のために、高度順応が欠かせず、結果、登山の期間が長くなる。

天候に左右されるが、およそ4週間~8週間。

この間の費用が登山中の滞在費である。

ベースキャンプ+高所キャンプをトータルで考える。

エベレスト登山中の家となるベースキャンプ
【写真】エベレスト登山中の家となるベースキャンプ

その間の「家」となるのが「エベレストベースキャンプ

登山をしていない間や、天候待ちの間はベースキャンプで過ごすことになる。

人が生活するのであれば食・住が必要となる。

ベースキャンプ滞在費はその滞在にかかる費用。

・住

隊員は個人のテントを用意してもらえる可能性が高い。

・食

キッチンテントで朝・昼・夜の食事。

材料と料理人に支払う給料。

・シャワー

数日から数週間に一度のシャワー等。

・トレイ

共有のトイレテント設置。

これらがベースキャンプ滞在費になる。


またベースキャンプから登山を開始した場合、高所にテントを設営するが、その場合も滞在費がある。

エベレストの高所キャンプは4つ
【写真】ネパール側の高所キャンプは4ヵ所となる

・高所キャンプ住

通常エベレスト登山では、キャンプ1、キャンプ2、キャンプ3、キャンプ4まで設営。

これが各高所での滞在場所となる。大抵3人で一つのテントを利用する。

・高所キャンプ食

キャンプ2以外は、インスタントラーメンや、スープなどの簡単な食事になる。

キャンプ2は料理専用スタッフがいる場合が多い。

以上がエベレスト登山の滞在費になる。


サービスやクオリティで料金が変わってくるが概算で

・食料、燃料などの消耗品がおよそ800ドル

・調理人とアシスタントの人件費6週間 1000-4000ドル

・キッチンテント、トイレテント、滞在テント利用料、設置料 2000-3000ドル

滞在費概算が3800-7800ドルとなる。これも公募隊参加費に含まれているはずである

ガイド料

公募隊に所属した場合、リーダーが外国人であっても、個人をサポートするのはネパールのシェルパになる。

そのシェルパの山頂までのガイド料、人件費。

エベレスト登山をサポート、ガイドしてくれるのがシェルパ
【写真】エベレスト登山をサポート、ガイドしてくれるのがシェルパ

ツアーのガイドのように、側についてサポートをするシェルパなど。

エベレスト登山を通じて5000ドル

これも公募隊参加費込である

ルート使用料

現代のエベレスト登山は公募隊登山がメインとなっている。

毎年登山期にはシェルパなどで構成されたグループがルートを工作し、クレバスには梯子を設置、フィックスロープと呼ばれる固定のロープをルート上に備え付ける。

ルートを使用するために使用料が発生する
【写真】ルートを使用するために使用料が発生する

公募隊はこれらのルートを料金を支払い使用させてもらう。

これがルート使用料である。

ひとチームで2500ドルおよび一人当たり600ドル。

これも公募隊参加費に含まれる

ベースキャンプゴミの回収費

エベレストベースキャンプで排出されるゴミの処理料金。

エベレストベースキャンプは標高5300mに設置される、最寄りの飛行場から徒歩で1週間ほどかかるところ。

当然、車両運搬などありえないのでゴミの回収は人および毛穴が牛のヤクに頼る。

荷物を運ぶ毛長牛のヤク
【写真】荷物を運ぶ毛長牛のヤク

登山シーズン中のベースキャンプには登山関係者などが生活する場所なので多くのゴミが排出される。

もちろん人間の排泄物も含まれている。

排泄物は畑の肥やしにと思われるかもしれないが、標高5300mでは木はおろか草木もない雪と氷の世界なので畑などもちろんない。

エベレストがあるのが雪と氷と岩の世界
【写真】エベレストがあるのが雪と氷と岩の世界

定期的にゴミ、排泄物をベースキャンプから運び出し処理する役割の人がいる。

これらに料金がかかる。

チームごとに4000ドル。これはディポジット(預け)となっているが、戻ってくる保証はないとのこと。

公募隊料金込み

政府オフィサーの費用

エベレスト登山には許可証が必要であることは既に書いたが、これを管理する人が政府からエベレストベースキャンプに送られてくる、これがリエゾンオフィサーと呼ばれる。

ベースキャンプにはネパール政府関係者が滞在している
【写真】ベースキャンプにはネパール政府関係者が滞在している
そして彼らのための費用もひとチーム3000ドル

公募隊料金に含まれる



酸素関連費

公募隊料金に含まれる最後は酸素関連の費用。

現代エベレストの登山者は殆どが酸素吸入をしながら山頂を目指す、統計によると97%の登山者が酸素を利用している。

エベレスト初登頂の前時代は酸素の有効性が疑問視されていたが、現在では殆どの公募隊参加者が酸素を使い登頂する。

この酸素ボンベが1本あたり500ドル。

キャンプ3の就寝時から利用を開始して、登頂するまでには人によるが大抵5本を消費する。

単純に500ドル × 5 =2500ドル という費用になる。

また酸素ボンベだけがあっても酸素を吸引できない。

酸素ボンベは、酸素吸引のマスク、そしてレギュレータと呼ばれる出力調整器具とセットで使用される。

酸素を吸引するには専用マスクとレギュレータが必要
【写真】酸素を吸引するには専用マスクとレギュレータが必要

酸素吸引用のマスクが450ドル

酸素の出力を調節するレギュレータ
【写真】酸素の出力を調節するレギュレーター

レギュレーターが 450ドル となっている。

必要最低限の酸素ボンベと専用マスク、レギュレーターは参加料金に含まれる

公募隊の参加料金目安

以上が多くの公募隊参加費用に含まれる費用。

参加公募隊によっては上記のものでも料金に含まないということもあるので確認が必要である

上記の費用を考慮してトータルではおおよそ、下の表の料金になる。(参考サイト

ネパール側からの料金中国側からの料金
ネパールの公募隊38,000$ およそ418万円39,283$ およそ432万円
外国の公募隊66,000$ およそ726万円62,700$ およそ690万円

表中でネパールの公募隊と外国の公募隊では料金が異なるが、これはネパール国内の登山会社を利用するか、またはネパール国外の登山会社を利用するかの違いである。

一般にエベレストはネパールにあり、地元の会社ということになり料金が安い。

国外の登山会社はネパールを訪れてアレンジするために料金が割高になる。


分かり易い例で例えると、

イタリアのローマ、コッセオ見学ツアーを計画したとする、

ローマの旅行会社に直接申し込めば割安、日本のツアー会社を通じるとその分の割高になる。

現地のツアーは英語が現地語でしか対応せず、イタリア流のサービスに、日本のツアー会社では日本語が通じ、サービスも日本クオリティになる。


こういったものが現地の登山会社、外国の登山会社との料金の差になっている。

次は2.公募隊料金に含まれない費用あるが、長くなったので次の記事へ
2020年エベレスト登山費用を詳細にみる、その2 公募隊に含まれない費用

<関連リンク>
2020年エベレストに登るには一体いくらかかるの?
【エベレスト登山】簡単説明。山登りしない人でも分かるエベレスト登山。
【エベレスト登山】エベレスト登山に必要なもの4つ。その2、資金。

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