標高6000m以下の山道を歩くことをトレッキングと呼ぶ。
この定義で行くとジリ村から標高5300mのエベレストのベースキャンプまでは
「トレッキング」ということになる。
ジリ村から始まる山道は、車はもちろん、バイク、自転車の車輪が
通ることができない山道で、唯一、生きものの足だけが進む方法になる。
それは人の足だったり、馬、牛の足だったり。
エベレストを登山しようと思う人のほとんどが、
首都のカトマンドゥからルクラと呼ばれる標高2800mの村に飛行機で飛ぶことになる。
ジリから歩く人はいない。
ルクラに空港ができる以前は皆この道を通って
エベレストのベースキャンプに向かっていたのだが、
ルクラに飛行場ができてからは、ここジリから歩く人はいなくなった。
トレッキングにしてもエベレストを見ようと思う人の
ほとんどはルクラまで飛行機で飛ぶのが一般的になっている。
6日もかけてジリからルクラに歩くのはよっぽどの山好きか、暇人だけである。
自転車を下りて、ジリの村に止めさせてもらった。
それから荷物を背負い山道に入った。
空気は澄みきっている。
空気を汚すものがないからだ。
呼吸をするたびにそれを感じる。
そしてこの静けさ。
風の音。川の流れる音。鳥の声。
そして自分の息づかい。
普段は耳に入らないような小さな音が耳に飛び込んでくる。
エンジンの音がいかにうるさいか。
電気が作り出す音がいかにうるさいか。