ひたすら湾を回り込むために西へ西へ走り続けた、休まずに日が傾くまで走り続けた。
「このくらい来れば湾を回り込めただろう」
と思ったので、南に向かう道に進んだ。
南に進み始めると、辺りは薄暗くなり、だいぶ街からは離れたようなので、野宿できそうな場所を探した。
ヒッチハイクでは野宿場所を探すのに歩き回るのだが、その点自転車は2,3kmなら簡単に移動出来るので、野宿場所を探しやすい。
車道から少し入った畑のモノ陰で中国の野宿第一夜を過ごすことにした。
ここなら、車道からも見えないし、畑なので人が近くを歩くこともない、我ながらよい場所が見つかったものだ。
「中国は危ない、危険だ」と言われていただけに野宿場所は慎重に選んだつもりだった。
もっとも野宿自体に「安全性」もなにもないのだが。
昼食はユンさんにたくさんごちそうになったので夕食は何も食べずに寝袋を広げ横になる、青島も韓国と同様夜になるとかなり冷え込んだ、寝袋がないと眠れない気温だ。
今日は入国初日で気が張っていたせいか、横になると満点の星空を眺めることもなく、眠りに落ちてしまった。
目を覚ますと夜が明けていて、空がうっすら明るくなっていた。
どこからとなく話し声が聞こえた、声のする方向に振り向くと、おばちゃん二人が畑の中を歩いてくる、
「見つかりませんように」
と身を潜めていたのだけど、ちょうど私の寝ていたところは畑の通路だったので、おばちゃん達は近くを通過する。
「来ないで~」と思う私の予想を見事に裏切り、おばちゃんたちは「なんだあれ」と臆せずにこちらに寄ってきた。
「○×▲○???」
と中国語で話しかけられるが、もちろん全くイミフメイ。
最初の一言はきっと「なんでそんなところでで寝ているの??」ぐらいだったと思う。
そこから矢次に何かを話しかけられたが全く理解出来ない。
一言、二言でも分かるのなら少しでも説明できそうだが、一言も分からないのだ、ボーゼンとしている私を見て、全く言葉が理解出来ないのが分かったのだろう、あきれた様子で向こうに歩いていった。
毎度のことながら海外で寝起きに誰か来られると一気に体力と気力を消耗したような気になる、しかし目は完璧に覚める。