世界最高峰のエベレスト8848mの登山に挑戦するには少なくとも4つのものが必要である。(この記事は南東稜ネパール側、ノーマルルートについて書いています)
前回の記事「エベレスト登山に必要なもの4つ。その1」では、エベレスト登山に必要な時間の解説をした。
今回は「その2」としてエベレスト登山にかかる資金について。
エベレスト登山は他の山に比べて破格に資金がかかると言われている。
その理由は大きく分けて3つ。費用の大きい方から順に並べると
1.入山料。(ノーマルルート、南東稜から)
エベレスト登山をするために政府に支払う料金。
2.登山中にかかる費用。
エベレスト登山は期間が長いために食費や滞在費、難所を通過するためのルート使用料がかかる。
3.道具や移動費など登山前後にかかる費用。
日本からネパールに向かえば当然移動費がかかる。また首都での滞在費。それから高所登山に備えた道具も高額。
それでは各項目をそれぞれ見てみよう。
まずは
1.「入山料」
「ノーマルルート」と呼ばれる登頂率の高いネパール側からの登山では特にこれが大きい。
「入山料」というのは、エベレストの登山者が山頂に立てようが立てまいが標高5300mのベースキャンプより上部に足を踏み入れるのであれば課せられる費用のこと。この入山料はエベレストを有するネパール政府が登山者に課している。
いわば遊園地やテーマパークへの入場料に近く、とにかくベースキャンプよりも上部に向かうのであれば、誰でもこの「入山料」をネパール政府に支払わなければならない。
「入山料」は登録するグループの人数によって異なってくる。
一人で申請する場合は25,000US$(約250万円、2013年)かかるが7人グループで申請すると70,000US$(約700万円)と一人当たりの負担が10,000US$(約100万円)と金額が少なくなる。
(2015年から入山料の変更があるそうです。詳しくはこちら)
このため一人でエベレストを登りたいと考える人は登録申請の名目上だけ、グループに所属する者もいる。
ちなみに、テーマパークのようにゲートがあり、そこで入場券をチェックするというような入り口はないが、ベースキャンプに滞在しているネパールの政府関係者が入山料の支払チェックに回るので入山料未払い登山は難しい。
万が一、入山料未払い登山が発覚すると、罰金を課せられ、数年のエベレスト登山禁止やネパールの入国禁止になるという話を聞いた。
<関連リンク>
【エベレスト登山】2017年登山許可を取らずにエベレスト登山をして逮捕される。
つまりエベレスト登山を目指す者は必ずこの入山料を収めなければならないということである。
単独の申請だと250万円、7人グループ申請で一人当たり約100万円となる。
2.登山にかかる費用。
入山料を払ったからと言ってすぐにエベレスト登山をはじめられるわけではない。すべての荷を自分で背負い、単独で登山をするといっても必ずかかってくる費用がある。
それはエベレスト登山の最初の難所である「アイスフォール」を通過するためのルート使用料。
ネパール側からの登山では、ベースキャンプのすぐ上部にアイスフォールと呼ばれる氷河崩落の難所が待ち構えている。
大小様々な氷塊が崩落しているアイスフォールを抜けるのは単独では至難の業。そこで登山期毎にルートを確保してくれる組織がある。SPCCと呼ばれるシェルパ(登山ガイド)で構成されたチームがこれを担う。
SPCCは迷路のように入り組んだアイスフォールに固定ロープを張り、大きなクレバスにははしごを設置し、安全かつスムーズに通過できるように整備してくれる。
登山者はこのSPCCが整備してくれたルートを使用することになるのだが、その際に使用料が発生する。
使用料は大よそグループで25,000US$(約25万円2005年)。
またベースキャンプでの滞在に際し、1グループでゴミの処理などとして預け金40,000US$(約40万円 2005年)が必要。
更にネパール政府使者に対する装備や滞在費も(何故か?)もこちらで支払うことになる。この費用が1グループ25,000US$(約25万円 2005年)。
以上はグループや隊でかかる費用である。
また商業登山、公募隊登山ではガイドをするシェルパの人件費もこれに加算される。
最後に
3.登山の前後にかかる費用。
エベレスト登山の前後にかかる費用として最も大きいのは道具代である。
標高8000mを超える超高所と呼ばれる地に足を踏み入れるにはそれなりの装備が必要になり、そういった装備は高額になる。
身につけるブーツやジャケットはもちろん、睡眠時に必要な寝袋もマイナス20~30℃対応のものにしなければならない。道具のクオリティ、質が高くなれば当然値も張ってくる。
それからまた各個人には使用する酸素ボンベに応じての料金。
酸素ボンベ一本あたりが400~500US$(約4万~5万)。また装備の部分でも触れるが酸素を吸引するためのレギュレーターマスク450US$なども必須。
エベレスト登山はこの登山道具を整えるだけでも大変な出費になる。
加えて道具以外にも日本からネパールやチベットに向かう際にかかる往復運賃。
ネパールに到着した時点で滞在するホテルや食費。
まだネパールの首都カトマンドゥから標高2840mのルクラまでの往復飛行機代なども忘れてはならない。細かいところではルクラからベースキャンプまで往復の食費と山小屋代もある。
上記すべての料金をまとめると恐らく(道具の品質や酸素ボンベの数で変わってくる)だろうがグループ申請しても一人当たり150万円では収まらない。
少なくとも以上の出費が最低限でも必要となるのでエベレスト登山はどうしても他の登山に比べて高額になる。
プラス商業登山や公募隊であれば、ガイド料からシェルパの装備費、荷物の運搬費など様々な費用が上乗せされる。最終的にはさらに高額になるわけである。
以前の記事【エベレスト登山】南東稜からエベレストに安く登る方法・プロフェショナル編ではベースキャンプすら使用しないスタイルの人を紹介したが、彼の様なプロフェッショナルならば(入山料+ルート使用料)の最低限で登れるかもしれにないが、一般の人にはハードルが高いだろう。
英語が話せネパールへ足を運べる人ならば南東稜 エベレストを安く登る方法・一般編。 も参考に。
<関連リンク>
【エベレスト登山】エベレスト登山に必要なもの4つ。その3、身体能力。
【エベレスト登山】一目瞭然!エベレスト関連記事目次、インデックス。
【エベレスト登山】2014年2月ネパール政府がエベレストの入山料の変更を発表。
【エベレスト登山】図解+写真でエベレスト南東稜登山。その1
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