標高5300mのベースキャンプから、標高5900mのキャンプ1の間には「アイスフォール」と呼ばれる区間がある。
文字通り「氷の滝」なのだが、よく言う「滝が凍った」ものではなく「氷が滝になっている」と言う方が正確だ。
「氷が滝になっている」と言われてもよく分からない、更に説明。
エベレスト、ローツェ、ヌプッエという3つの山に囲まれた谷に落ちた雪が氷河となり、谷の出口の急斜面で滝の様に落ちているということなのだ。
落ちているといっても目視できるほどのスピードで無く、年間数センチから数メートルというもの凄くゆっくりな速度であり、見た感じではとても動いているようには思えない。
エベレスト登山の第一関門はこのアイスフォールだ。
エベレストの登頂がなされていなかった当時はここを通過するのは無理と考えられていて、他のルートが試されたが、結局、この「アイスフォール」を通過するのが、一番登頂に近いとされ、最終的にはここから登ったエドモンド・ヒラリー卿がエベレストの最初の登頂者になった。1953年のことである。
つまり何がいいたいかというと、アイスフォールは見た目、とても人間の通過できるような場所では無いと言うことだ。
今にも崩れてきそうな氷塊が無秩序に並び、その間には底の見えないクレバスが口を開けている。最初にここを攻略しようと試みた人はすばらしい勇気の持ち主だ。
ヒラリーとテンジンの初登頂から様々なルートが研究され、登攀されたが、今もなおこのアイスフォールのルートがエベレスト登山の主流になっている。
近年では「SPCC」と呼ばれる、ネパールの山岳補助チームが、毎年アイスフォールを通過するためのルートを工作する。
そのためエベレスト登山を目指人にとって、アイスフォールは難しいものではなくなってきている。
とはいえ、エベレスト登山の中で死亡率が高いのもこのアイスフォールなのだ、確かにルート工作により氷塊に囲まれた中でもルートを見失ったり、クレバスを迂回せずに進めるが、無秩序に並んだ氷塊の倒壊は誰にも予想はできない、自分が通過している時に、真上の氷壁が崩れ落ちれば簡単に下敷きになる。
氷がせり出したその下を通過する所が何箇所もあり、その下を通過する時には走ることはできないが、できる限りの早足で、一息で「今は崩れないでくれよ」と祈るような気持ちで通過する。
その様な危険箇所にはチベットのタルチョが祭られていた、つまり「神頼み」ということなのだ。
<関連リンク>
エベレストに向けて出発
エベレスト登頂者
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