30年後の深夜特急

 移動を開始したのだが、例のごとくというかいつものごとく滞在が長引中。

 季節外れのリゾートは平日は閑散として静寂ですが、週末になると物凄い賑わいになります。走り出したのはよいのですが、あまりに久しぶりに自転車を漕いだために少々筋肉痛に見舞われていました。

 最近はベネチアの中古本バザールで発見してしまった、沢木耕太郎氏の「深夜特急」を読みふけっている。

 購入できたのは出発部分の1巻を除く、2~6巻で、前々回にも書いたように読み終わったらベネチアの留学生か在住者に渡たそうと思っていたのだが、結局ベネチアを発つまでに読み終わらず、無理やり荷物に詰め込んできた。

「深夜特急」は旅行者、特にバックパックで旅行する人に人気がある。なぜかというと、描かれている内容がバックパック旅行そのものだからだ。

 1974年、もう今から38年も前に著者である沢木氏があるだけの財産をかき集め香港からイギリスへバックパックを背負って旅行するという内容もの。

 この本自体は以前に読んだことがあったのだが、もう何年も、いや10年以上も前の話なので内容もほぼ覚えていないので、今回読み始めるとまた新鮮で面白いものだった。特に、氏の通ったルートに私のルートも似通ったところがあり、実際自分が通過した地域の話は「そう、そう」と共感できる部分が多い。

 もう今から四世紀半以上昔の話なので、時代背景は異なるはずなのだが、それほど色あせた感じがしないのだ。言葉はもちろん、現地の習慣や、人々との会話の流れ、旅行者に対する態度などほぼ変っていないと言える。

 もちろん、大きく変ったと言える点もある。一番大きいと思ったのはインターネットの存在。

 1970年代はインターネットが存在せず、旅行者達が日本と連絡をとる方法は大使館や中央郵便局止め宛ての手紙だったという、もちろん国際電話もあっただろうが、今と比べて電話も普及していないところも多かっただろう。

 移動しながら日本と連絡を取れないが故に、今よりも孤独を感じる時間が多かったようだ、同時に自分と向き合う時間も。

 その他にも物価や貨幣の変化、当然ながら何倍も高くなっているし、ヨーロッパに関してはユーロなんて存在もせず、各国が独自の通貨を持っていた。

 日本企業の進出具合、本の中では日本企業といえば「セイコーの時計」だったという。現代ではトヨタやソニーなど数えあげればきりがない。

 結局、総じての感想は変化をしたものもあるが、それ以上に変化をしない部分が多いと感じた。

 一見、世界は目まぐるしく変っているようで、実はその世界を構成する人々の内面的な部分は早々には変らないか、殆ど変らないのではないだろうか。人がその土地土地のものをいかに引継ぎながら生きているかが伺える。

【写真】バックパッカーのバイブル深夜特急。
【写真】バックパッカーのバイブル深夜特急。

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