【エベレスト】深刻化するエベレストのゴミ・排泄物問題

近年のエベレスト登山者の増加により、エベレストのゴミ、特に人間の排泄物の蓄積が問題になりつつある。

エベレストの初登頂がなされた、1953年から2010年までの間にのべ5,104人が登頂している。(参考:ウィキペディアエベレスト

そしてのべ5,104人の登頂者はあくまでも山頂を踏んだ人の数である。

つまり確実にこれより多くの人がエベレストに足を踏み入れていることになる

ルートが確立され、登頂率の上がった近年でさえ登頂率50%前後なので少なくとも軽く1万人は挑戦している計算になる。

直近の2019年の1シーズンのエベレスト登頂者はの数は876人。この数字は毎年増加傾向にある。(参考:ナショナルジオグラフィック

【写真】ベースキャンプには登山者以外にも多くの人が滞在している。
【写真】ベースキャンプには登山者以外にも多くの人が滞在している。

登山者数が増えることにより取り上げられる問題がルートの渋滞

そしてゴミ・排泄物問題である

今回はこのゴミ・排泄物の問題について。経験を交えての話になるので、ネパール側、南東稜ルートの話である。

エベレストのゴミ問題

エベレスト登山の基地になるベースキャンプのゴミの収集はよく管理されていて、登山期が終了するとあまりゴミは見当たらない。

ベースキャンプにはネパール政府の役人が滞在しているので彼らが管理しているといえる。

【写真】ベースキャンプではゴミ・排泄物はキチンと管理されている。
【写真】ベースキャンプではゴミ・排泄物はキチンと管理され、ゴミを運びだす役割の人がいる。

しかし問題なのはベースキャンプより上部

特に標高6300mのキャンプ2と、最終の標高7900mキャンプ4のゴミが目立つ。

キャンプ1とキャンプ3は雪上に設置するため、登山期が終わるとゴミは雪の中に埋もれてしまうために目立たない。

比べてキャンプ2とキャンプ4は雪上ではなく露出している地表、堆積物の上に設置する。雪が降っても、登山期なると雪が解けてゴミが再び露出する。

特にゴミが多く見えたのは標高7900mにあるキャンプ4。ここはサウスコルと呼ばれる鞍部で登山期には雪が堆積しておらず、地表が露出している。そして多くのゴミがある。

ゴミの種類はカラの酸素ボンベ。カラの燃料。食料のパッケージ、空き缶、ペットボトルなど自然にもどらないものばかり。

植物や生命が存在しない、岩と氷雪の世界にゴミは異物のように映る

【写真】キャンプ4で撮影したゴミ。燃料の缶が多い。
【写真】キャンプ4で撮影したゴミ。燃料の缶が多い。

2014年からはネパール政府が登山者一人につき8kgのゴミの収集を義務付けるとのこと。

【関連リンク】
【エベレスト登山】簡単説明。山登りしない人でも分かるエベレスト登山。
【エベレスト登山】図解+写真でエベレスト南東稜登山。その1

排泄物

人間が生活するのであれば、食料が必要になり同時に排泄物のことも考えねばならない。

既述のゴミと同様、ベースキャンプにはトイレ専用のテントが張られ、簡易のトイレが設置される。ベースキャンプ生活者はこのトイレを利用する。

【写真】中央部、細長いテントがトイレテント。
【写真】中央部、細長いテントがトイレテント。

トイレは各隊ごとに準備をするので数は十分。そしてトイレの排泄物が溜まってくるとベースキャンプより下に担ぎ下ろす役割の人がいる。

これらを担ってくれている人がいるのでベースキャンプが排泄物まみれということはない。

問題はゴミと同じベースキャンプより上でのこと。

この場合もキャンプ1、キャンプ3は雪上なので前年度の排泄物が大量に目につくということはほとんどない。

登山期が終われば雪に埋もれ、その部位がゆっくり移動していくので、翌年は目につかない。

【写真】キャンプ1は雪上に設置。
【写真】キャンプ1は雪上に設置。

やはり排泄物が問題になるのはキャンプ2とキャンプ4

くどいようであるが、ここは雪上でなく、堆積物の上。キャンプ2、キャンプ4にトイレテントは存在せず。

登山者は物陰で用を足すだけである

当然、立地のよい物影はトイレゾーンと化す。

さらに悪いことに、キャンプ2、4の標高では排泄物が風化しない。

通常インド田舎もトイレがなく、畑がトイレ、線路脇がトイレという状況を多々目にしてきたが、これらの地域では大地(土)と接しているのでバクテリアによる分解が進む。また昆虫や小動物も多い。

加えて乾燥、暑さ、風などで2週間もすれば風化してしまうだろう。畑ならば耕す時に土に混ざってしまい畑の肥やしになるだろう。

ところがエベレストのキャンプ2、キャンプ4は環境が違う。記事ではバクテリアが存在せず、排泄物は分解されないとなっている。もちろん畑など存在しなし、虫や昆虫もいない。

加えて年中冷蔵庫、冷凍庫の中のような気温

【写真】キャンプ2の様子。
【写真】キャンプ2の様子。

恐ろしいことに排泄物はずっと残り続けるのである。

時としてエベレストのキャンプ4より上方、デスゾーンでは遺体は回収することができず、永遠に亡くなった場所に留まり続けることになるが、排泄物もしかりである。

【関連リンク(汚物につき閲覧注意)】
標高5300mエベレストベースキャンプにおけるヤク(荷物運びの毛長牛)の糞の状態。クリックすると別枠で表示します。

まとめると

年々増加するエベレストの登山者。

それに伴い今までは考えもしなかった高所での環境破壊が起こりつつある。

近年、ゴミやもとより人間の排泄物の堆積が深刻化。

2014年からネパール政府は登山者一人につき8kgのゴミの回収を義務付ける方針を打ち出したが、これによりエベレストの環境は改善されていくと期待したい。

【関連リンク】
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【エベレスト登山】常識では考えられない、遺体が放置される場所。
遺体回収不可能!?死の領域、エベレストデスゾーンとは
【エベレスト登山】ネパール政府がエベレストのゴミ収集を義務化。
エベレストで「山のように蓄積された人間の排泄物」が環境問題に(外部)
BBCニュース(外部・英語)
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