バグ島

「今どこの辺り?」

プーラの町でよく話をしたサシャからメールが来た。

「パグ島を走っているよ」

と短く返事をすると

「バグ島だって?ナンだってそんなところに行っちまったの?今時期そんなとこには誰もいかないよ。」

との返信があった、今時期にパグ島に渡る人間はいないということなのだろう。パグ島を走り始めると嫌でもそれを実感させられた。

【写真】ラブ島からパグ島に渡る。
【写真】ラブ島からパグ島に渡る。

観光地化されていたラブ島に比べてパグ島は白い岩に覆われた草木も育たないような不毛な島。標高3000mくらいに行くと森林限界により背の高い木がなくなるが、パグ等は最高地点で海抜348mなのだが背の高い木が全く無い荒涼した景観だ。

【写真】木々が生えず、白い岩がゴロゴロしているパグ島、何も無いが景観がよい。
【写真】木々が生えず、白い岩がゴロゴロしているパグ島、何も無いが景観がよい。

 今まで通過してきたイストラ半島はもちろん、アドリア海沿岸の島にももちろん木々が茂っていたのに、どうしたのかパグ島は本当に木が生えていない。時々見かけるのは岩の隙間に植えられているオリーブの木ぐらい。しかしこの殺伐とした風景が意外によかった。

 この景色ばかり何週間もというのでは飽きるが、突然木々のない岩だけの世界というのが新鮮。それにその岩稜の向こうに見える波ひとつ無い静かな水面、アドリア海の入り江が島の内陸まで入り組み、左側には本土のビレビト山脈の雪化粧をした峰々が連なっている。こういう景色に360度囲まれ、自転車を走らせるのはなんとも至福の時である。

 時々通過する町も人の気配が感じられない、サマーハウスというのか夏の間だけ人が来るのだろう。パグ島最大の町パグも冬眠をしているかのようにひっそりとしていた。町にかかる橋を渡る、海面を覗き込むと海底の白い石がよく見える。この海の透明度もかなりのものだ。椅子やテーブルが閉まっている店の前に山積みにされているの見かける、ここも夏の人出は相当なものだろう。それにしても殆どの商店が閉まり、閑散としている町を通る度に島に来る季節を間違えたことを再三思いしらされる。

【写真】島の内陸に入りこんでいるアドリア海は波も無く穏やかな水面。
【写真】島の内陸に入りこんでいるアドリア海は波も無く穏やかな水面。

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