15 イタリア回遊編

人の歴史

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ダルコさんとの出会いは路上からだ。

曇天の土曜日、人が減り始めた午後。

路上で芸をしていてもサッパリ人が止まらなくなった。引き上げようと自転車に手をかけた時、道向かいの店から手招きをする人が視界に入った。

ここはスプリトでは一番の歩行者道、両脇には衣料品店がズラリと軒を連ねている。イタリアに比べる高級ブランド店とはいかないがつぶぞろいの店々。手招きをしたのはZARAの店員だ。招かれるままに近づくと黒いスーツの男性は

「良いショーだったよ」

と言いながらコインを差し出してくれた。人は立ち止まらなかったが彼は遠目に見てくれていたというわけだ。

数日後、芸をしていると青いフリースを着た男性が話しかけてきた。ずいぶんと親しげに話す彼はマケドニアの出身でダルコと名乗った。また別の日も、友達とカフェに行かないかと誘ってくれた。そしてその時に始めて彼の仕事が警備員だと知った。

「知っているのかと思ったよ」

彼は言う

「始めて会った時の事を覚えてる? 」

と続けた。服装が全く違うので気がつかなかったがあの日私を呼び寄せてコインをくれたのはダルコさんだったのか。

それからことあるごとに彼は私を呼び出しスプリトの街を連れ回してくれた。ある時はバーで一杯飲み、また自宅に呼んで自慢の奥さんと会わせてくれたり、観光名所を案内してくれた。

通常はいわれのない親切を受けると「何かあるのではないか?」と勘ぐってしまうのだが、彼とその友人達にはその怪しさがまるで無かった。

彼はその昔の自分を「どうしようない悪(わる)」だったと言う。それが神との出会いによって大きく変わったと熱心に語った。日本でも聞きそうな話である。素行の悪い者が師に出会い、心を入れ替えるというストーリー。

興味深かったのが友人マリオさんの話だ。彼はネットゲームにはまり4年半を部屋から出ずにコンピューターの画面の前で過ごしていたと、話はそこから始まる。日本で言うところの引きこもりじゃないか。それが今は立派に立ち直って社会人として働いている。

うん、うん、マリオさんの場合もやはり転機のきっかけが神様なのか。

と思ったら大違い。マリオさんには婚約者がいて、ネットゲームにのめり込んだため婚約を破棄されたというのだ。「こんなことをしている場合ではない」と彼は慌てコンピューターを売り払い、ネットゲームからすっかり足を洗ったのだが、時既に遅く、彼女は戻ってこなかった。

「ネットゲームで僕は4年半の時間と婚約者を失ったのさ」

と肩を落としながら言うマリオさんを見て、悪いと思いながらウケてしまった。

スプリトに暮らす3人の男性、それぞれにドラマがあり、人生がある。旅行で見れる遺跡や景観も良いが、こういった現地の人々歴史も中々興味深い。

【写真】スプリト一のショッピングストリート マルモントバ通りMarmontova ulica

【写真】スプリト一のショッピングストリート マルモントバ通りMarmontova ulica


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