恐怖!ドラム缶橋

11月4日の午前10時15分に岸を離れた。

船は順調に流され始め、ベナレスの街が遠ざかると辺りには何も見えなくなり、雨季の増水した水に削られた壁の様な土手だけが見えていてだけだ。

ガンジス河はベナレスの様なゆったりとした流れが海まで続いているのかと思ったのだが、それは間違いであることが漕ぎ出して数時間で分かった。

ベナレスを離れてからしばらく変らぬ景色と水流、そして河の真ん中に船を進める前方に衝突するようなものは何もない。このまましばらく流れてくれるだろうと気を緩めていた船を操舵せずに放置し、操舵の席の横に寝転んだ。メンバーも皆、横になって寝ている。

河の流れが心地よく真っ青な空を見上げ「最高だな~」と思う。ふと体を横に向けると、さっきまであんなに離れていた壁の様な土手がすぐ3m位まで迫っている。知らぬ間に船が右岸に寄せられていた、それもなりの早いスピードで。

普段はゆっくり歩いている位の速度しか出ないのに、今は100m全力疾走位の早さが出ている

「うわっ!」

とあわててオールを水に戻し、舵を切る。あのまま気が付かず、壁にぶつけられたら、船は間違いなくゆがみ、そこから水が入り、沈没してしまうだろう。

例え大河であっても河の流れには緩急があり、突然船が旋回し流れに飲まれ、あらぬ方向に向かってしまうのだ、しかしこんなことはまだまだ河下りの序章に過ぎなかったのだ。

同日、夕刻前方に不思議なモノが見え始めた、河を遮る様に線が見えたのだ。

橋にしては高さがないし、堰があるとも聞いてない。ゆっくりと謎の物体に近づく。

だいぶ近づいてからそれがドラム缶を浮かべた橋であることが分かった。

大きいドラム缶を2m間隔ぐらいで繋いだ、浮遊橋だったのだ。近づくにつれて、橋の高さがあまりに無いことが分かる。

今の船は屋根をつけているのでそれが通るか通らないかの高さしかない、それに幅も。

水は細い場所を通るときに水流が早くなる、ドラム缶の間を抜けていく水の流れは相当に速い、その早い流れにあわせて船をコントールして、ドラム缶の間を通さなければならないのだ、

「できるか?」

と考える前にやらなければならない、船頭から激突したら沈没するかもしれなし、側面がドラム缶に押し付けられてもその水圧で転覆するだろう。

オールを握る手に力が入る。ドラム缶があっという間に迫ってきた、皆固唾を呑む。

ドラム缶の間隔に船を合わせる、水流は更に早くなる。

「ガゴゴゴゴッ」

と側面はこすったものの船は無事にドラム缶の間を抜けた。

「ふぅ」気が抜ける、やばかった。乾季のガンジス河はこんなのがまだまだあるのか?今回は何とか通り抜けられたが、ドラム缶の橋は本当に恐怖だ。

水の流れは「穏やか」「やさしい」などと言う生半可なものでなく、「力強く」「圧倒的」でとても人間の力でどうにかなるものではない、それを分かった上でどうにかその力を利用させてもらい、進むしかない。

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