朝、目が覚めると隣で寝ていた宮君は既に起きていた。
ボッーと隣で座り込んでいて、なんだか視線は遠くを見ているようだ。
「おはよう、宮君、はやいね」
と私が声を掛けると
「荷物が無くなりました」
とポツリとつぶやく様に宮君が言った。私は寝起きだったが、飛び起きて
「えっ?」
と聞きなおす、すると宮君はハッキリと
「荷物が全部無くなりました」
と言った。
「えええっ!」
と驚いた私は
「どうして?どこに置いていたの?」
と聞き返す。
「足元です」
宮君は淡々と答える。
「なんで頭の方に置いて、枕と縛りつけておかなかったの?」
と私は言ったが、もう既に遅い、荷物は無くなってしまったのだ。
私は野宿の経験から日頃、貴重品を枕にして、その枕と荷物を縛り付けておくようにとアドバイスしていたのだが、宮君曰く昨日は疲れてしまったのでそれを怠ったらしい。
イランでの野宿は周りで夜を明かす家族連れが多いので安心しきって気が抜けてきていた感は否めない。
そしていくら疲れたからと言ってもやはり外で寝る以上荷物の管理はしっかりしなければと思うのだが、取られてしまったものは仕方ない、私達の騒ぎに気が付きタトゥも起き上がった。
事情を簡単に説明し
「金品以外のものはこの辺りに捨てられてるかもしれない」
と皆で手分けして公園内を探すことになった。
ふとタトゥの足元を見ると、彼は靴を履いていない
「あれタトゥ、靴は?」
と私は不思議に思って聞くと
「朝から見当たらないんだよね」
とタトゥは真顔で答える。
「それって君の靴も盗まれたんだよ!」
盗まれた自覚のないのんきなタトゥ、宮君と顔を見合わせて笑ってしまった。
宮君はこの盗難で荷物の大部分を盗まれてしまった、不幸中の幸いにパスポートや貴重品は自分が所持していて盗られなかった。
そして肩掛けカバンのみで旅行を続けることになった。
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