バングラディシュ人の町

世界遺産でもリゾート地でもなく、観光地でもない街モンファルコーネに着いた。街の中心部に近づくと明らかに今までの街と雰囲気が違う。何だ、何が違うのか。

街の中心には中央広場があり、そこに接して教会があり、街のどこからでも見える鐘楼がそそり立ち、路面は綺麗にタイルが敷き詰められており、いったってよくあるイタリアの街並みなのだ。しかし、何かが違う。キョロキョロと辺りを見渡す、バングラディシュ人が一人、二人。。。10人以上。違ったのは街並みではなく、視界に入る人達だ。恐らく10人に8人(80%)はバングラディシュ人である。時々バングラディシュ人にまぎれてイタリア人が歩いていたりする。なんだこの街はバングラディシュ人が明らかに多い。

【写真】道行く人はバングラディシュ人ばかり。
【写真】道行く人はバングラディシュ人ばかり。

 今まで数多くのイタリアの街を通過し、様々な場所でバングラディシュ人を見かけたが、ここまでバングラディシュ人の多い町を見たことがない。中国人にのっとられたプラートという街がフィレンツェの近くにあっが、まさにここはバングラディシュ人の街と言っても過言ではない。

街を歩くと数多くのバングラディシュの人経営の店がある。食料品店から電話ショップ、カフェまでも店員がバングラディシュ人だ。これほど沢山のバングラディシュ人に囲まれているとバングラディシュを回った時のことを思い出す。

【写真】バングラディシュの喧騒。(イメージ写真)
【写真】バングラディシュの喧騒。(イメージ写真)

 バングラディシュではどこで自転車を止めても人が集まり、手品を始めようものならトンでもない人が集まり、後方で見えない人が電柱に上り始めることもあった。つまり、ここで芸を始めればもの凄いことになるだろう「こりゃたまらん」とこみ上げてくる笑いを押さえて、路上に立つ。

芸を始めて一分もせずにバングラディシュ人が一人、二人と足を止める。「おおっ!」さすが国は変れど国民性は早々変わるものではない。

近くにたむろをしていたバングラディシュ人も寄ってくる。「こりゃ凄い!」と芸を続ける。時々記憶の片隅に残っている片言のベンガル語で「エック、ドウッ、ティン!」などとかけ声をかけながら盛り上げるのだ。そして一通り終ったところで「よしここだ!」と帽子を差し出す。

バングラディシュではお金を集める時には面倒見のよいオジサンが登場して、「ホレ!皆の者、ここにコインを入れるのじゃ!」とか言いながら群集を回ってくれたのだ、ここでも誰か登場するか?と辺りを見回すが「シーン」として何の反応もない。

「ぐむ、アクションが小さかった、もう一度」と頭を下げながら帽子を高々と上げた。

シーンとして再び反応はない。

まぎれて見ていたイタリア人がポツポツとコインを入れてくれたが、バングラディシュ人は何の反応もせずにちりじりに散っていくのだった。ずーん。

【写真】すぐに人が集まるが、コインを入れてくれる人は皆無。
【写真】すぐに人が集まるが、コインを入れてくれる人は皆無。

(仮説的解説) 仲良くなったバングラディシュ人のフェロスさんやカマル君に聞いて知っていたのが、イタリアに出稼ぎに来ているバングラディシュ人は相当に切り詰めた生活をして、本国にお金を送金している。そのため、無駄に使うお金がないということで投げ銭は殆どしないと推測。
(後日談) 在住の人に訊ねたところ、モンファルコーネは造船業が盛んで、そこにバングラディシュ人が雇われているためにこの街にはやたらにバングラディシュ人が多いそうです。

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