2014年9月16日 「ナポリ流」 イタリア ナポリ
いよいよ長らく滞在したイタリアを後にしてクロアチアから東欧に進もうかと考えていたところ、どこがどうなってか、なぜかまだイタリアにいる。
旅行とは先が読めない、というか私の行動の先が意味不明である。
紆余曲折はかなり長いので割愛するが、簡単にするとローマで冬を越えて春を向かえ、「さて」というところで色々な人に会い、その中の一人であるこちらで大道芸をしながら生計を立てているヨウジさんという方の縁でナポリに来ている。
初めてナポリに来たのはもう4年も前にことなのだけど、治安が悪そうと言われていたがそれほどでもなくて、芸もウケタという記憶、またチャンスがあったら長めに滞在してみたいと思っていたところに今回の機会が訪れた。
というわけで、どういうわけだかナポリに来ています。
ナポリの人々は北部の人に比べてやたらにフレンドリーであり、時々親しすぎると感じることも。
とそのせいか路上で芸をしていると「うちに来てやってくれないか?」と頼まれることが他の地域より多い気がする。
ナポリに来て三週間が過ぎたがその間6回呼ばれて芸をする機会があった。
そしてその6回いずれもナポリならではの習慣があるので驚いた。
それはなぜか芸をする前にご飯を振舞ってくれるのである。
「前」というのがミソである、通常芸が終わった後に「お疲れさん」という具合で食事でもどう?と言われることが殆どなのだが、ナポリではなぜか芸を始める前に「ピザを食べてから」という具合に食事を勧められる。
初めてナポリで呼ばれたのは誕生会だったのだけど、会場に着くなり呼んでくれたお父さんが「まぁピザでも食べてから」と席を用意してくれる、驚いたことにピザ一切れではなく直径30cmくらいあるピザを丸々出してくれた。
その時は「なんだ、時間に余裕があるからか?」と思った。
その次はレストランに呼ばれた、そのレストランでもなぜか芸をする前に「まぁ、これを食べてから」と食事を出してくれた。
こちらは呼ばれて芸をしにいくだけなので食事を出してくれること自体はありがたい。
が、しかし、これから人の前で芸をする身である、慣れているとはいえ若干の緊張がある。
つまり食が進まない、完全にリラックスして食事をできているわけではないのだ。
食事をしながらも「失敗しないように演じねば」と考えてしまう。
これが演じた後ならばもう、むしろゆっくりと味わって食べられるのだが。
二回とも芸をする前に食事を振舞われたので妙だなと思っていたところ三件目のお声がかかった。
「まさかな」と思いながら会場のピザ屋に到着すると、早速席に案内されてまた大きなピザが運ばれてきた。
今回は妙だなと思うより確信した。
ナポリでは芸人を呼ぶととりあえず「食べさせる」みたいなのがある。
なぜだろうか?と思わずにはいられない。
ちょうど滞在先に生まれも育ちもナポリというコテコテのナポリ人のエマさんがいたので訊ねてみた。
「ナポリで芸をしに行くと必ず何か食べさせられるのだけど?何でですかね?」
するとエマさんは、はははっ、と笑いながら
「ナポリの人は食べたくても食べられない時期があって、そのれからは食べることをとても大事にしているのだよ、だから人を呼んだ時はまずおなかを満たすように食事を勧めるんだよね」
まず、客人の腹を満たすというのがナポリ流らしい。
イタリアを旅行していると「ナポリは危険だから近づくな」などと言われることがあるけれど、実は色々と面白いナポリ。