インド人のサンザイさんが、
「免税店でウィスキーを買ってきたので一杯やろう!」
と誘ってくれたが、こちらはそれどころではない、明日にはプレゼンテーションが控えている。
今から準備しなければ、それより今から準備しても間に合うかどうか。
とにかく写真の選別
今日の発表を見ていると、どうしても写真に合わせて喋るという方法がよい。ではとにかく写真の選定から始めよう。
写真のフォルダを開く。2002年から2015年までのフォルダがズラリ並んでいる。うわっ~。
「よし、こっからさっさと選んで!」
と取り掛かったものの、撮り貯めた10年以上分の写真である枚数が多すぎて選別できるわけがない。こんなことをしていたら夜が明けるどころか三日かっても終わらない。
次のアイディアは
写真から選ぶのは時間がかかりすぎると、次に考えたのはどんな話をするかストーリを先に決めて、それに見合った写真を適当に選び出すというもの。
そうかストーリか。
丁度自分の日記のページがなんとなくカテゴリー別けされていたので、その流れでいくことにした。
・日本からインドまで
・海抜0mからエベレスト
・エベレスト山頂から海まで
・砂漠横断、カスピ海南岸。
・ヨーロッパ
・最後まとめ
という風に大雑把に章立てして、それに見合った写真を選んでいくことにした。
間に会うのか
とにかく適当にストーリーに見合った写真を選択、順番に並べる。そしてそれについて語るという方法で進める。
この作業なら「あの時の印象が強いからと」それにあった写真を引っ張りす、また次とそれを繰り返す、写真の山から漠然と写真を選ぶよりも、狙いを定めて選ぶほうが断然早い。
そんなこんなで作業が終了したのが明け方の4時。
一応、写真の選択が終わった、120枚。これに合わせて話をすればきっと30分くらいだろう。試しに時間を測ってみたいが、もう体力の限界なのでそれは明日に。
夜が明ける
眠い目をこすりながら逃せない五つ星朝食のために起きる。朝からお腹一杯食べると再び眠くなったがそんなことは言っていられない、早速練習に取り掛かった。
集めた写真を順番に流し、その写真について適当に解説を入れる。「こんなのでよいのだろうか?」と疑問を持ちつつももはや後戻りできず。このスタイルでいくしかない。
試しに時間を計測してみると26分、おっ、なかなかよいではないか。
よし、これでいこう。
フェスティバル二日目開始
やはり今日発表することになっているサウジアラビアのオマールに
「準備はできた?」
と訊ねると、
「うん、写真を4枚だけ準備したよ」
「よっ、4枚で30分!?」
「そう、何とかこれでやってみるよ」
4枚で30分とはなかなか凄い。1枚の写真で7分ぐらい話すのだろうか、凄い。
と他の人を心配している余裕はない。
私の前のプレゼンテーターはスロベニアのマテスさん、やはり英語のウィキペディアに名前が掲載されている人だ。ウルトラライトと呼ばれる超軽量飛行機で単独で世界を何度も回り、世界記録を幾つか持ち、本を11冊出しているというとんでもない人だった。
マテスさんのプレゼンテーションがまた凄い。単体の飛行機から取られた世界各地の写真は今まで見たことのないほど美しく圧巻だった。
こんな凄い人の次に私である。いいのか主催者?
いざ、ステージへ
ステージの脇に案内される。ハッサンに「時間が余ったら手品しても大丈夫?」と訊ねると「大丈夫」。あらまぁ。
なぜかあまり緊張していない。スピーチの場合何かミスをしてもそれほど大きな問題にならないというのが大きい。
「次は日本からのKeiichi Iwasaki」とお呼びがかかったのでステージに上がる。幸い観客席は暗く、何人ぐらいいるのかが分かりづらいうえ、表情が見えないのでこちらには都合がよい。
簡単に挨拶と自己紹介をして、映像係りに頼んでいた写真を順番に流してもらう。
それに合わせて私も適当に写真の解説をインチキな英語で入れる。ともあれ順調にスライドが進んでいく。
最後にまとめとして
・ポケットに2ドルしかお金のなかった私が今日まで旅行を続けられています。もちろん多くの人の助けがあったからですが、同時に何かを行うのにお金はも大事ですが、アイディアもそれに負けないくらい大事です。
・よい自転車ではなく、ローカルな自転車(ママチャリという表現がわらかず)を使ってユーラシア大陸を横断できたり、登山家でない私がエベレストに登頂できたのは意志を強く持ち続けたからだと思います。もしあなたが強い意思をもてば多くの可能性があるということを忘れないでください。
とまとめて終了とした。
手元の時計を見ると、まだ20分を回ったところである「よしこれは!」少し時間があるようなのでと準備していた手品を開始。ステージから客席までが遠いのでウケが分からん。
手品を終えて、司会が
「ありがとう!」
と言ったのでステージを下りる、
すると観客が詰めかけて・・・・
ではなく、観客席にいた20人ほどの子供が「うわー、手品をもっとやってくれ~」と駆け寄ってきた。おいおい、マジか。
とにかく自分の出番は終了。一気に気が抜けてホッとした。