インターネットが変えた旅行

香港からポルトガルまでのバックパック旅行を記した「深夜特急」の沢木耕太郎氏が旅行した1974年からもうすぐ40年が経過する。

 以前の日記にも書いたが本に描写されている現地の人々の接し方はあまり変化したように感じないが、あの時代と決定的に違う点がある、それはインターネットの存在。

 インターネットが普及しはじめたのが忘れもしない「Windows95」が発売されてから、その名が示す通り1995年のことである。

 当時はデスクトップコンピューターに繋いでやっと使えたインターネットだったが、それから20年も経たないうちに端末機がみるみる小型、軽量化し旅行中に持ち歩くことも珍しいことではなくなった。

 特に2000年以降からのインターネットが旅行に及ぼす影響が大きくなり始めたと思う。宿や移動チケットの予約などが簡単に個人できるようになり、そして今ではホスピタリティクラブやコーチサーフィンなどのサイトを利用すれば偶然を期待せずとも現地の人とも知り合うことさえできるようになった。

 沢木氏が旅行したインターネットの以前の旅行は偶然や人の出会いが旅行の行き先を決めてしまう要素が多大に存在したのだが、今では何から何まで事前に予定が組めてしまうので行き当たりバッタリという要素は少なくなったとも言える。

 もちろん現在でもインターネットに触れずに旅行すればそういうことも可能であろう。

 本当にインターネットが旅行に及ぼした影響は計り知れない。チケットの事前予約などのような利便性の他にも最近特に思うのが、その土地の情報を得るのがネットにより本当に簡易になったこと。

 今までは有名観光地以外の地ではガイドブックを持っていなければ旅行中にその街の情報を得るのは難しかった。

 まだ観光地ならばツーリストインフォメーションのオフィスを訪れれば欲しい情報は手に入る。

 問題はツーリストインフォメーションも無いような小さな街や、観光局では手に入らないようなマニアックな情報などだった。

しかしインターネットがある現在はこれらの情報も以前と比べられないほど労せずに手に入るようになった。

 恐らく以前だったら、日本に戻り図書館に行き文献を調べなければ分からないようなことでも、現地にいながらにして調べられる。これは実はかなり大きい変化だと思う。

 例えば、先日到着したトリエステの街。私はガイドブックも何も持っていないのだが、携帯電話をネットにつなぎ「トリエステ」と検索する。するとインターネット上の辞典である「ウィキペディア」にトリエステについての情報がつらつらと書かれている。

 概要から始り、人口、地形、気候、歴史、見所まで詳細に書いてあり、この街のことが少し分かった気になる。

また運河の袂に立っている銅像に「JamesJoyce」と名前が彫ってある。「どんな人物だったのだろうか?」と名前を検索すると、アイルランド生まれで、20世紀で最も重要な小説家とされている。

 彼はこの地で10年を過ごしたということが分かり、川端康成も彼の影響を受けたという日本との関連まで簡単に知ることができる。その気になればアマゾンで彼の著書を買い、業者に頼んで電子化してもらいこの地で読むことも可能である。

 今まで通過してきた土地、これから訪れる町、様々なものには、その背景や刻んできた歴史があるのだ。それを旅行しながらにして知ることができるというのは革新的な変化であるといえるのではないか。

 あの分厚いガイドブックを持ち歩かなくてもよいというだけで確実に革命的な変化ではあるのは間違いない。

【写真】運河沿いにたたずむジェイムズ・ジョイス の銅像
【写真】運河沿いにたたずむジェイムズ・ジョイス の銅像

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